2017年3月25日土曜日

企画展パネルその3 バターをつくる

企画展のパネルを再現するシリーズの第3回。バターのつくり方です。

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མར། バター
ミルクは完全栄養食品ですが、保存の難しい食品でもあります。人びとはミルクに様々な加工を施すことで、保存の効く乳製品をつくり、それによって安定した食生活を獲得してきました。中でもバターは、最も価値の高い乳製品として重視されてきました。


ミルクは強く撹拌すると、バターのもととなる脂肪分が大きな塊となって表面に浮き出てきます。撹拌の方法は時代とともに変遷してきました。かつてはヤクやヒツジの皮で作った革袋を用いて撹拌していましたが、今ではほとんど見られません。




下の写真のような木製の桶を用いた撹拌方法は革袋よりも効率がよく、広く用いられていました。かつては木製一つとヤク一頭が等価で交換されていたといいますが、今では電動クリームセパレーターの普及により、木製桶を使う人は激減しました。



電動クリームセパレーターは遠心分離によって脂肪分(クリーム)を分離する機械です。かつてバターづくりは女性に苛酷な労働を強いてきましたが、この機械の登場はそれを著しく軽減させました。なお、電気は太陽電池を活用しています。

中央に温めたミルクを注ぐと10分程度で脂肪分(左)、脱脂乳(右)に分離されます。


こんどは分離したクリームに含まれているたんぱく質を水で洗い流し、叩いて脱水します。数十分かかる重労働です。








これを冷暗所で保存すれば、チベットのような冷涼な気候のもとではかなり長い期間保存できます。

バターをつくったらお初は山の神様に捧げます。下の写真中央のような形のお供えを作り、翌朝の焚き上げ(山の神様への供養)の際に捧げます。






仕事展の展示品
撹拌用の木桶(左)と搾乳用の木桶(右)


手回しのクリームセパレーター。電動が主流になる前は手動式だった。

もっと詳しく知りたい方は『チベット文学と映画制作の現在 SERNYA』をどうぞ!