2017年3月28日火曜日

企画展パネルその6 煮炊きをする

企画展パネルを再現する第6弾は「煮炊きをする」かまどの話です。

* * *

ཐབ་ཀ། かまど
長くテント暮らしを続けてきた牧畜民にとって、暮らしの中心にはいつもかまどがありました。家族はあかあかと燃えるかまどのまわりに集まってお茶を飲み、食事をして、お経を読み、客人をもてなすのです。


伝統的なかまどは、テントの中央から奥にかけて細長い形に作ります。手前の火を焚く部分をタプカと呼び、奥の燃料糞を置く場所をオンカといいます。オンカの位置は少し高くしてあり、そこから燃料糞をタプカの方へとスムーズに供給します。タプカを中心に奥をヤルギ、手前をマルギと呼びますが、これはそのまま日本語でいう上座、下座という意味にもなります。火を焚く部分には大きなかまど石が三つ置かれており、そのまわりを土で固め、仕上げに白い土できれいに成形します。灰はたまったら灰捨て場に捨てに行きます。


オンカに積まれた燃料糞(オンワ)。ヤクの糞を干して作った燃料です。よく聞かれますが、匂いはまったく臭くありません。こちらのお宅では茶碗置場にもなっているようです。テントの支柱の一本は必ずオンカの中央部に据えられます。


街に移住した世帯ではチャクタプという鉄製のストーブを使っています。火を焚く部分を鉄板でカバーし、煮炊きする部分と煙突を設置したものです。現在では、牧畜地帯のテントでも鉄製のストーブを用いている家庭が多くなりました。


一般的に、かまどの奥に向かって右側がアパサ、左側がアマサと呼ばれます。アパサは父の場所という意味で、客人が通されたり、着物や馬具などが置かれる場所となります。アマサは母の場所という意味で、台所用品が置かれ、調理や乳加工が行われます。